親戚のおじさんの話のようなエッセイ のほほん雑記帳

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のほほん雑記帳 (角川文庫)

一時期、筋肉少女帯が大好きな友達に影響されて特撮などと一緒によく聴いていた時期があったので、ミュージシャンとしての大槻ケンヂについては多少知っていました。一方作家としての彼についてはほとんど無知で、唯一グミチョコレートパインをかなり昔に読んだことがあるくらいです。この間古本屋でこの本が安く売られていたのを見かけ、ふと、そう言えば筋少っていいバンドだよな、グミチョコパインって面白かったよな、とかそんなことを思い出し、何となく興味がわいたので手にとってみました。

話を聞いているように読める

非常にくだけた文章で、まるで目の前でオーケンのトークを聞いているようにスラスラと頭に入ってきます。かたい文章に疲れた方や、肩の力を抜いて読書をしたいという方にはおすすめです。内容もバカみたいな笑えるものから、ちょっと切ないエピソードまで盛りだくさんです。若干下ネタもあるので小さい子供にはすすめられませんが。

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けっこういいこと言ってる

飄々とした語り口で、明らかに笑わせにきてる部分もあるので全体的にニヤニヤしながら読めます。しかし、ふとした瞬間に名言のようなことをサラっと言っているので侮れません。特に僕が刺さったのは、元バンドメンバーの三柴氏について書かれた章のこの文章です。

友達でも夫婦でもバンドでも、長く続けるのに必要なのは同じくらいのスピードで成長していく事なのかもしれない。それがズレはじめた時、さびしいけれど先に成長した側が相手に別れを告げなければならないのだ。

 

僕も趣味で長いこと色んなバンドをやっているので、これは本当にそうなんだよなあーと共感してしまいました。もちろん趣味でアマチュアの僕のケースと比べたら重大さが天地の差ですが、メンバーの脱退、疎遠になった友達、別れた元カノ、なんか全てに当てはまる気がして、これを読んだとき色々思い出して少し切なくなりました。

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面白い親戚のおじさんみたい

正月やお盆の集まりで、親戚のおじさんが「おじさん若い頃バンドやっててさー」とか、「おじさんの初恋はな、」とかそんな身近な人の思い出話を聞いているような気分で読んでいました。本が書かれた年代もあり、出てくるシャレやネタがちょっと古く、例えに出てくる芸能人もよく知らない昔の人だったりするのも、リアルにおじさんの話っぽいです。

遠い存在の人なのに、何となく近くに感じられる文章はオーケンの才能ですね。とはいえ現代では僕の父親より歳上のオーケンも、この本を書いた頃はまだ20代だったそうなので、親戚のお兄さんくらいにしといた方がいいでしょうか…。

まとめ

一人称が「俺」「ボク」「私」と統一感が無かったり、冷静に見ると「何言ってんだこいつ」とツッコみたくなるような理論を真面目に語っていたりと、一見めちゃくちゃっぽいのに、なぜかへぇーと納得してしまいたくなる変な説得力がある言い回し。当時大槻ケンヂが若者の間でウケた理由が少し分かった気がしました。彼のおすすめの本についても書かれていて、次に読む本の参考にもなります。彼自身の作品にも興味がわいたので、今度いくつか読んでみようと思います。

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