寝るときにするイヤホン、通称「寝ホン」。何を選ぶかで割と睡眠の質が変わってきます。寝るときにするイヤホンとして最強の一品はどれなのか。DTM、バンド活動、音響など、音の世界に長年関わってきた身として、睡眠に適したイヤホンを探してみました。
寝ホンに適したイヤホンの条件
イヤホンのタイプ
主にカナル型かインナーイヤーかという選択肢がありますが、これは完全にそれぞれの趣味の問題です。
インナーイヤー型は装着部のでっぱりが少ないものが多く、寝返りや耳を下に向けた際の痛みや違和感は少ないかもしれません。一方カナル型はその密着性から音質の面で勝ります。また、イヤホンが耳栓のような役割も果たしてくれます。
このようにどちらもメリット・デメリットがあります。個人的には「でっぱりの少ないカナル型」が好きです。
安価であること
寝ホンの条件としてかなり重要な部分です。寝相の悪い僕のような場合、寝返りを打ちまくって起きたらイヤホンが断線していた、というケースも珍しくありません。
また、横向き寝の際どうしてもイヤホンを圧迫してしまいダメージがかかりやすいです。気になる方は、高価なイヤホンは普段使いとして、寝ホンは寝ホンとして用意するのもいいでしょう。
寝ホン用として、壊れてもそこまで後悔しない、安めのイヤホンというのが最強の寝ホンの条件だと思います。安価の基準は人それぞれだと思いますが、ここでは大体3,000円以下を目安にしています(価格は日々変動しているのであくまで目安です)。
音質が派手過ぎない
よくある低音重視のロックに適したイヤホンや、過剰に色付けした音質のイヤホンは向きません。通常の音楽鑑賞の場合これらの条件は長所ですが、寝る前なので優しい音質のほうがいい気がします。
寝る前なので音楽ではなくラジオなど人の声をメインに聞く場合もあると思います。そういった場合やはりマイルドな音質のほうが向いていると思います。
ハウジングが小さい
ハウジング(イヤホンの外側を覆っている部分)が大きいと、寝返りをうったり耳を下にしたときに痛いです。また、イヤホン自体を圧迫してしまい故障の確率も上がります。なるべくハウジングが小さく平らで、耳から出っ張る部分が少ないものを選びます。
寝ホンに適したイヤホンのご紹介
実際に色々試してみました。いくつかご紹介します。
ALPEX AHP-336
商品のパッケージ裏に「寝そべりイヤフォンに」、「飛び出ず目立たない」などのキーワードが記載されており、開発段階から寝ホンという用途を意識して作られたイヤホンです。
小型ながら低音もしっかり感じられ、意外にパワフルです。寝る直前まで音楽を楽しみたいという方におすすめ。
寝ホン好きの方はご存知かも知れませんが、かつて「耳が痛くならない」という点でかなりよかった名機「Senzer S10」という製品がありました。しかし今では廃番となっており、これはその代替としてもおすすめです。耳から出る部分が短くまさにゴロ寝向きと言える形状。
ALPEXは大阪にある日本のメーカーで、マイナーながら良い製品を出しているところなのでブランド的にも信頼できます。
サンコー SILICN53
音質については、ちょっと微妙です。寝ながら使える快適性に技術を全振りしたのか、ほとんど音に元気がありません。音楽を聴くには流石に寝る前と言えど向いてない気がするので、動画コンテンツやラジオ専用として使うならいいかなという印象です。
柔らかい装着感は唯一無二だし、サイズ感もストレス無し。何よりメーカー側が寝ながら使うの専用かってくらいその用途で推してきてるので、音質よりもとにかく付け心地、という方には実は一番おすすめです。
PHILIPS SHE4205
そして重量自体がだいぶ軽めなので付けている感覚もあまり気にならず、この点も寝るとき向きかと。
カナル型が苦手という方には特におすすめします。音質はやはりカナル型に比べるとちょっとスカスカ感がありますが及第点。一応低音に気を使ってるみたいで、迫力とはいかないまでも最低限の芯はあります。
final E500
音質面ではかなり癖があります。というのもこのイヤホンはVR、バイノーラル、ASMRなど立体的な音声を「推奨」するイヤホンです。そういった「空間を感じる」音源に強く、かなりの臨場感があります。
「声」が主体の音源を聴くときには、その位置や吐息まで感じることができ思わずゾクゾクする感覚まであります。
ASMRなどの心地いい音を聴きながら眠りたい、入眠用の暗示や催眠を聴きたいという不眠症の方にも試してほしいリアルな音質です。
一方、普通に音楽を楽しみたいという場合は、前述の特徴から少しとっちらかった風になってしまう印象です。音の広がりは感じられますが。音源の選択を間違えず、適切に使えばかなり使えるイヤホンであることは確かです。
AGPTEK カナル型 寝ホン
他に良い点としては、シンプルなリモコンが付いているので手軽に操作可能なこと、値段がとても良心的なことなど。
ただやはりこの手のものは音質面では一歩劣り、有名メーカーが出しているイヤホンなどと比べると音楽鑑賞用途では耳の肥えた方は満足出来ないかも知れません。
音楽用途ではなく動画やラジオ、ASMRなどを聴きながらとにかくリラックスしたい人には向いていると言えるでしょう。
パナソニック RP-HJF3
小さすぎて耳から落ちるという意見も見受けられますが、大きめのイヤーピースも付属しているので、自分に合うサイズに変更することで調整が可能です。
音質は、このフィット感重視の形状もあってか、迫力はそこまでです。でも寝る前なのでがっつりロックとかじゃなくてBGM系なら普通に楽しめるレベルです。値段も考慮するとけっこうがんばってると思います。
ゼンハイザー CX 3.00
音質は、パンチが無いと言えば悪く聞えますが、逆に刺激の少ないキャラクターが睡眠導入向けとも言えると思います。優しめの音質の原因は高音はクリアだけど低音がキレのあるタイプではないということ。ロックなどドンシャリでなんぼ的なジャンルには合わないかも知れませんがそういうのを求めている方はこれを選ばないと思います。
寝ながら女性ボーカル、バラード系や、最近流行りのASMRなどをしっとり聴きたい人にはおすすめしたいです。
JVC HA-FX14
イヤーピースがSより更に小さいXSが付いてくることから、耳の小さい人をターゲットにしていることが分かります。イコール耳への負担が少ない、つまり寝ホン向き、ということでピンときました。
これは形状的にも横向きOKなのは嬉しいですが、更に音質もけっこうバカにできないのがいい意味で裏切られた点でした。カナル型らしくしっかり聴き取ることができます。それになんといってもかなりお安め。この値段にしてはクリアな方です。カナルが嫌いな人にもこのコンパクトさ、フィット感は試してほしいです。
AKG Y23U
音質という面では、低価格で手に入る小型イヤホンという縛りの中なら高いレベルにあると思います。小型でもそこは流石AKGブランド。
特に中音域がクリアなことから、ボーカル主体の音楽に向いていると思いました。あとラジオも聴き取りやすいかも。高音がちょっと弱いので、ドラムのシンバルの抜け感とかが微妙かも知れません。でも寝る前にそんなシャンシャン叩きまくる激しい音楽は聴かないので、まあいいでしょう(笑)。寝ホンにしやすい形状かつ、(この価格という前提で)音質が整っているという印象です。
ちなみに色によって値段が違うので注意です。
SONY MDR-EX255
ハウジングのでっぱりがこのラインナップではあるほうで装着感では一歩劣り、寝ホン「専用」としては他の候補が良いかも知れませんが、普段使いと兼用ならこれ一つで取り回すのもおすすめです。
SONY MDR-EX155
ADVANCED/SLEEPER
ハウジングはシリコンボディでコンパクト。「どんな耳にもフィットする」というメーカーの強気な売り文句からも、痛みの緩和・快適な付け心地が期待できそうです。
イヤーチップのサイズは一つだけですが、そのチップがすべてのタイプの耳にフィットするように設計されていて、それに合わせて前述の柔らかいシリコンハウジングです。この記事が追い求めている「横になっても痛くない」という文言を製品の特長として掲げている期待の新製品。
さらに、音質も音量レベルにかかわらず睡眠、リラックスに適したものになるように調整されています。睡眠を妨げる耳に刺さるような音が無い、ニュートラルでクリアながら低音も損なわない音質が特徴。
マイク、リモコン付きでそれなりにお求めやすい価格設定。ここまでの特徴として寝ホンとしての条件はすべて満たしているといっていいでしょう。いや、その用途のために開発された商品なので当たり前なのですが。
比較的新しい製品で、寝ホンのニュースタンダードとなる可能性を秘めています。
INAIR イヤースピーカー M360
実はこのインエアー、耳にすっぽり収まる形状をしており、装着感もソフトなことから寝ホンとしても優秀なのです。また、タッチノイズにも気を使った設計で、布団の中でモゾモゾ動いたときにゴソゴソ鳴るあの感じも軽減されています。
低音の迫力はやはり耳にイヤーピースをピタッとはめるカナル型には劣る感がありますが、このINAIRにしかない広い音場は、睡眠時のリラックスに適した音質ではないでしょうか。
割と高級イヤホンクラスのお値段になっており、かつ特徴的な音質と装着感なのでできれば一度どこかで試聴することをおすすめします。これを寝ホンのためだけに購入するとなると躊躇する価格帯かもしれませんが、通常の音楽鑑賞や、ゲームなどを長時間プレイする際などにも重宝するので一つ持っていると快適です。
これまでのイヤホンともヘッドホンとも一味違う革命児「INAIR」、一聴の価値ありです。
BOSE SLEEPBUDS II
ですが、どうも普通のイヤホンとは違うみたいです。値段もけっこうなアレですが寝ホンマニアとしてはチェックせずにいられなかったので詳しく調べてみました。気になる方は以下の記事にて。
Bluetooth・ワイヤレスの寝ホン
寝るときケーブルが絡まりそうだし、Bluetoothとかワイヤレスの方がいいんじゃないの?と思う方もおられるかも知れません。でも完全ワイヤレスとかBluetoothだと仕様上なのかどうしてもハウジングがゴツくなりがちで、寝返りとか横向き時に邪魔なものが多いです。
どうしてもBluetoothを選ぶなら、その際の注意点としてはネックバンド型のようなバンド部が厚いものは避けてください。実際につけて寝てみると分かりますが、ネックバンドが首の下で邪魔になります。バンド部を手前に持ってきて逆に装着するという手もありますが操作性が悪いです。首でケーブルが繋がっているタイプは、線のすっきりしたものを選んでください。
あとは「充電が必要」という問題もあったり…。ということで今のところ数は少ないですが、一応寝るとき用として耐えられそうな製品を。
1more Comfobuds
テレビ番組「マツコの知らない世界」のワイヤレスイヤホン特集の回でも取り上げられた、寝ホンを目的として開発されたワイヤレスイヤホンです。完全ワイヤレスで本気の寝ホン向けはあまり数がなく、貴重な存在と言えます。ドライバやハウジング部を極力小さく作っているので、完全ワイヤレスながら睡眠時というシチュエーションにストレスなく導入できます。
こちらの製品だけずば抜けて金額のランクが高いですが、ニッチなシチュエーションに照準を合わせて開発されているため、どうしても割高になってしまう模様。あえてネックになる点を探すとすればそこでしょうか。しかしその分、音質もかなりこだわっており、専門家の監修のもと睡眠にも適したものにチューニングされています。
ドライバにはハイエンドやプロ仕様の現場においてよく見られる「BA(バランスドアーマチュア)型」を採用していて、通常の音楽鑑賞においても一定のレベルは超えています。具体的に言えば、「ダイナミック型」という通常のよくあるドライバに比べて、クリアで分離の良い音質です。
完全ワイヤレスという条件かつ寝ホン向けとなると、それなりに費用をかけられるならベストな選択肢ではないでしょうか。もう少しコスパがいいものをご所望の方は以下の製品もチェックしてみてください。
FiiO FIO-FW1
高品質なオーディオ製品を世に送り出すFiioが開発した完全ワイヤレスイヤホン。こちらも先ほど紹介したComfoBudsと同じBA型のハイエンドなイヤホンです。BA型のイヤホンは比較的小型なので、横寝の圧迫感が問題となる寝ホンには適しているといえます。
FIO-FW1は小型なことに加え、その丸みを帯びた形状から寝返りをうったときに枕につけた耳が痛くなりません。特に寝ホン向けとして売り出している製品ではありませんが、これらの特徴から分かるように寝るときにピッタリです。
更に音質面でもボーカルを重視したチューニングになっており、「声」を聴かせるのが得意なイヤホンです。音楽よりも、寝ながらASMRや音声作品を聴きたいという方に特におすすめしたいです。音楽でも女性ボーカルモノは優しく聴かせてくれます。低音が重要なジャンルは少し苦手かもしれません。
JBL TUNE205BT
オープン型なのでカナル派の方はそこがマイナスかも知れませんが、気にしない、むしろオープン派、という方にはアリではないかと思います。充電ケースとセットでそれなりにお値段しちゃいますがとにかくブルートゥースにしてはあまりないフィット感なのであまり競争相手がいないポジションです。
SONY WI-C300
ベースが弱いという意見も見かけますが、実は低音の質感はイヤーピースが自分の耳とちゃんとフィットしているかで変わってくるので、もしベースが弱いなと感じたらイヤーピースを調整してみてください。僕はこのイヤホンに関しては低音は十分出ていると感じました。
全体的に分離が良く、寝ホンとしてだけではなく音楽鑑賞としても楽しめるタイプのイヤホンです。寝ホンとしての評価は、かなり小型ですっぽり収まるので耳から出る部分がなくストレスがかからないようになっています。かつそれなりにフィット感もあるので落ちたり抜けたりもありません。
「寝るとき用のイヤホン」でのご紹介ですが、普通に初めてBluetoothイヤホンデビューする方の最初の一品として、単純に音楽を楽しみたい人にもおすすめです。
またブルートゥースという持ち運びのしやすさを活かし、電車や飛行機の座席などで眠りたいときにこういったイヤホンが一つかばんに入っているとサッと使えて便利です。
SONY WI-C310
一見、両側のバッテリーとリモコン部分がでっぱっていて邪魔になりそうですが、絶妙な位置に配置してあり、少なくとも僕は寝るとき気になることはありません。
このイヤホンで褒めるべきところは、寝ホンに向いた装着感もそうなんですが、それよりも音質だと思います。価格を抑えたワイヤレスイヤホンの中ではかなりの当たり製品です。一部ドンシャリだというレビューが散見されますが、個人的な印象ではむしろ中域が目立つクリアなタイプだと感じました。つまりボーカル向け、音声向けでもあります。
音楽もポップス~ロックまで軽快に鳴ってくれます。EDM系の電子音楽もアリです。迫力よりバランスというタイプ。普段使いとしても十分満足できるレベルで、久しぶりにSONYやるやんと思いました。
後継の登場で価格を落としたWI-C300と、音質面で向上したC310。悩ましい選択肢が増えました。ただ、「寝ホン向けの付け心地」という観点ではどちらも満足いくレベルにあり、好みと予算で選んでいいと思います。
Senzer Q20
耳にはりついている感じではなく、耳が大きい人だとスポーツなど激しい動きでは落ちてきそうな気がするほどです。ただ、それが違和感のなさにも繋がっているので寝る時にはいいのではないでしょうか。
音質はというと、軽い感じというか、密着感がないこともありイヤホンというよりも耳元でスピーカーが鳴っているような感覚に近いです。そのため音質面で多くを期待するとう~ん…となるかも。
ただあまりゴツゴツしていない形状の完全ワイヤレスというのは希少で、更にこの値段で完全ワイヤレスという脅威のコスパなので、寝ホンとしてトゥルーワイヤレスを希望している方はまずこれでお試しとしてしばらく使ってみるのもいいと思います。
音楽アイマスクという選択肢
ここまであくまでイヤホンという形状にこだわってきましたが、どうしてもイヤホン自体がダメ・中耳炎などの症状で装着できないなどの理由だったり、とにかく音質は良くなくていいからとりあえず音を流して寝たいなど、もっと安眠グッズ寄りの商品をご希望の方には、「音楽アイマスク」という商品をおすすめします。
一応音楽を聴きながら寝ることはできるし、安眠グッズとして定番のアイマスクと一体型になっていて耳の違和感や痛みとは無縁です。Bluetooth対応のものもあり、けっこう便利かも。詳しくは以下にまとめています。
枕をスピーカー化?
もう枕自体をスピーカーにしちゃおうよというアイディア商品もあります。普段使っている枕に平べったい専用のスピーカーを仕込むというだけなんですが、ある意味最も違和感は少ないかも知れない。音質・音量に関しては過度な期待はできませんが、「音を聴いて寝る」というだけを求めている方ならこちらも十分な商品ではないでしょうか。
寝ホンは難聴になる?
ここまで色んな寝ホンをおすすめしてきましたが、前提として、そりゃ音楽やラジオを聴きながら寝オチするのは睡眠の質が良いとは言えないでしょうし、耳になにかを入れっぱなしで寝るのもあまり良くはないかも知れません。寝ホン民は大体そんなことは分かっているのです。もう何かを聴きながら寝ないと落ち着かないというか…。
一応寝オチする寸前に意識があるときは、イヤホンを外して眠りに落ちたり、本当に疲れている時は普通に眠るように心がけています。
難聴に関しては、寝ホンが原因というよりも、その際の音量が問題です。あまり大きな音量で聴き続けるのは当然ですが耳によくないので、適した音量で聴くようにしましょう。また、耳を圧迫して痛めないためにも、この記事でご紹介しているような「小型・平面・柔らかい」といった特性のイヤホンの使用をおすすめします。
まとめ
一口に「最強の寝ホン」と言っても、その「最強」な部分が音質だったり、装着感、デザイン、値段など各イヤホンに特徴があります。全てがパーフェクトという夢のような一品は流石にありませんが、この中のどれか一つくらいは合うイヤホンがあると思うので、よかったらあなたの安眠のお供にどうぞ。
また睡眠用途以外にも、飛行機の座席や病院などでの使用、ASMRなどを聴くときに耳を圧迫しないイヤホンを探している方は、是非この記事のイヤホンを試してみてください。
コメント
WI-C310は寝ホンに向いてますか?
コメントありがとうございます。
前モデルのWI-C300と同様、耳の部分はコンパクトで負けず劣らずの装着感です。
音質はよりクリア寄りになっている印象でした。
ドンシャリ好きの方には×かも知れません。
個人的には寝ホン向きかと思います。
購入済みですので、近日中にレビューします。
8月31日、レビュー追加しました。よろしければご覧下さい。