The SALOVERSと古舘佑太郎の音楽

文学のススメ

現在は俳優としてNHKの連続テレビ小説「ひよっこ」にも出演しているex-The SALOVERSの古舘佑太郎。最近はYahooのトップでも彼の活躍を見かけるようになり、認知度も着実に上がっているようです。父親が古舘伊知郎氏ということで余計なフィルターを通して見られがちですが、そこに関係なく彼のミュージシャンとしての魅力に気付いていただくため僕なりにおすすめの楽曲などをご紹介していきます。

90年代オルタナティブロックの後継者

90年代にオルタナ御三家と一部で呼ばれた”ナンバーガール”、”くるり”、”スーパーカー”。SALOVERSの楽曲はそれらの影響をモロに受けているようです。リアルタイム世代ではないですが僕もこの辺のバンドは大好きで、SALOVERSの楽曲を初めて聴いたときもあの時代の音を感じて引き込まれました。

また、北のレジェンドbloodthirsty butchersのトリビュートに参加していることからも、それらの先人が築き上げてきた日本のロックミュージックがしっかりルーツになっていることが伺え、楽曲にも確かな説得力があります。

プロデュースなどの形で、ex-スーパーカーのいしわたり淳治氏やex-ナンバーガールの中尾憲太郎氏という、これら伝説のバンドの元メンバーが実際に関わっていることも注目です。

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文学少年の初期衝動

高校の同級生で結成されたSALOVERSは、09年に有名な10代限定フェス「閃光ライオット」で審査員特別賞を受賞した頃から徐々に注目され始めます。僕がバンドを知ったのもこの頃で、初めて聴いたこの「サリンジャー」に一発でやられました。

読書が大好きという古館の文学の影響を感じさせる詞とラフでハスキーなボーカル、若い時にしか出せない爆発的な初期衝動。失礼ですが全員楽器の演奏力は微妙で、それなのに全員やたら手数が多く主張するのでなんだかゴチャゴチャした感じになっていますが、それが逆にどうしようもなくエモーショナルでかっこいいです。

この曲が収録されたファーストアルバム「C’mon Dresden.」は超名盤です。1曲目の「China」は爽やかな疾走感と切なさがありバンド全曲の中でも上位に入るくらい好きです。

余談ですがこのサリンジャーはイントロのギターのせいかART-SCHOOLの「スカーレット」に似ていると一部で言われてしまっていました。まあよく使うようなコードフォームで8ビートのロックだと何かと少し似ちゃうのは仕方ないかなと思ってしまいます。ちなみに歌が始まったらそんなに似てないことに気付きます。

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楽曲の引き出し

セカンドアルバム「バンドを始めた頃」から、優しい雰囲気の楽曲です。激しいスタイルが売りのバンドかと思ったらこういうのもやるのが魅力の一つです。イントロにも出てくるギターの4度和音のスライドとか、全体的な楽曲の雰囲気とかなんとなく”くるり”の影響を感じます。

セカンドに収録されている曲はファーストよりも昔に制作されたものもあるそうで、ある意味ファーストよりも荒削りな衝動を感じます。「SAD GIRL」などは超ストレートなパンクソングで、失恋と思われる詞を不器用に表現しています。ボーカルの合間に入るリードギターが気持ちいい。

全力疾走感

「いざ、サラバーズ!」というプレデビューアルバムを挟んだ4枚目に収録された「オールド台湾」。なぜ急に台湾について歌ったのか分かりませんが、楽曲自体はSALOVERSの真骨頂とも言える血管ぶち切れそうな爆発力のあるロックです。この辺から演奏力をつけてきて、ドラムの手数とかギターのフロントピックアップの瑞々しいサウンドがナンバガを彷彿とさせます。

等身大の不器用さを表現

バンドとしても力をつけてきて、同じ疾走感のある楽曲でもがむしゃらなだけでなくどことなく余裕が出て、オシャレで洋楽的雰囲気も感じさせるようになった頃。このバンドを知らない人に僕がいつも最初におすすめする曲がこの「床には君のカーディガン」です。

詞の中ではまだ恋愛に慣れていない不器用な少年の葛藤のようなものが描かれています。誰にでも一度は経験があるような甘酸っぱいワンシーン。個人的には大学入って少し経った頃にできた彼女とのストーリーっていうイメージです。やることやった後になんか寂しくなる感情の機微、自分の部屋の床に置いてある彼女が脱いだ上着が何となく目に留まるというリアルな描写。それをそのままタイトルにしてしまう着眼点がにくいです。

青春の象徴

ラストアルバムとなってしまった「青春の象徴、恋のすべて」。最後の作品ですが一番インディーロック感がある気がします。1曲目の「Disaster of Youth」は悲しく切ないバンドとの決別の曲ではないでしょうか。

友情の全てを代償にしてまで目指す夢に疲れただけさ

少年は大志を抱きすぎて死んだ そして生まれ変わるのさ

これらの詞が彼のバンド活動休止における理由の全てのように思えてしまえます。

ソロとして

バンドが活動休止後もソロとして活動しています。SALOVERSに比べると温かみのあるよりパーソナルな部分を感じさせる作品になっています。ソロと言ってもサポートミュージシャンを迎えバンドスタイルの楽曲も多く、結構バックの演奏も聴きどころです。ソロでのお気に入りは「トマトキャンディ」や「フリーマーケット」です。

まとめ

僕は話題になっている「ひよっこ」を見たことがないので、彼の俳優としての魅力はまだあんまり知りません。ただけっこう長いことバンドの活動を追っていた身としては、俳優から彼を知った方に少しでも音楽家的な側面を知っていただけたらと思います。

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