タブ譜に頼らない 耳コピの手順とコツ

どうしても弾いてみたい好きなバンドのあの曲。でもバンドスコアも出ていないしネットにタブ譜もない…。そんな場合は自力で耳コピしてみるしかありません。この記事では僕なりの耳コピのコツのようなものを書いてみます。

バンドスコアの信憑性

バンドスコアが出ている場合でもそれをそのまま弾いて安心してはいけません。僕もギターを始めたての頃は何冊かバンドスコアを買って弾いてみたりしていましたが、自分で耳コピができるようになってくると、けっこうスコアが間違っていることに気付きます。

音は合っていても細かいニュアンスが違ったり、酷いとコード自体が間違っているときもありました。雰囲気だけでもコピーできれば満足という場合にはそれでもいいのですが、好きなバンドの曲であればあるほど、オリジナルに近い演奏をしてみたいと僕は思ってしまいます。

そこで最後に頼りになるのはやはり自分の耳です。

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音楽理論は必要か

耳コピをするにあたって、必ずしも音楽理論を知っておく必要はありません。何の知識もなくても究極的には耳で聴いた音をギターで再現できればいいのです。

でもやっぱり最初の頃はそんなに簡単にはいきません。そこで、理論を少しかじっておくと耳コピが格段に楽になります。本当に少しだけでよく、曲のキーや簡単なスケール、あとはダイアトニックコードの概念をちょっとだけ勉強しておけば、それに当てはめて理論的にコードやスケールを導き出せるようになるので便利です。

今は手っ取り早く必要な理論だけを覚えられる教則本などもたくさんあるので、耳だけでコピーするのに行き詰った方は一度理論に触れてみるのもいいかと思います。

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映像があればまず確認しよう

コピーしようとしているバンドの曲が収録されたライブDVDかBD、もしくはyoutubeなどの動画サイトでライブ映像などが見れる場合は、まずそれを確認した方がいいです。

ギターの手元がアップで映っているシーンがあったりしたら儲けもので、聴覚だけでなく視覚の情報もヒントにできるので、コピーの早さが段違いになります。いわゆる目コピってやつです。

耳だけでコピーしていると、音は合っていてもポジションが違ったり、実はカポをしていたりチューニングがレギュラーじゃなかったりとか、意外と気付かないことがあります。

ポジションまで同じにする必要はないと思う方もいるかも知れませんが、一方でその辺もこだわってコピーしたい方もいるでしょう。完全コピーのためには、映像がとても役に立ちます。

なるべくヘッドホンで

可能なら音を取るときはヘッドホンを使用した方がいいです。特にベースなどの低音はスピーカーなどでは聴き取りにくいことがあるので、思わぬ間違いが起きたりします。

耳コピ用に使うヘッドホンはなるべくどの楽器も聴き取れる解像度が高く余計な味付けのないモニターヘッドホンがおすすめです。定番どころだとやはりSonyのMDR-CD900STが間違いないです。

元の音源のクオリティにもよりますが、ギターも各弦の音までリアルに聴き取ることができて耳コピ時には強い味方になります。その他個人的にはAudio TechnicaのATH-SX1aなどが聴き疲れもしにくく長期戦になりそうな場合でも安心です。

聴き疲れしにくいモニターヘッドホン オーテク ATH-SX1a
業務用としてプロの現場でも使われているらしいモニターヘッドホン。DTMなどでのレコーディング時のモニター用ヘッドホンとしてはSONYのMDR-CD900STを既に所有していましたが、予備の意味も含め、違う性質のヘッドホンももう一つ持っておき...

チューニングは万全に

当たり前ですが、耳コピに取り掛かる前に自分のギターやベースのチューニングがちゃんと合っているか確認しておく必要があります。オクターブチューニングなどもちゃんと合わせておけば、変に半音間違えたりなどのミスが減ります。

耳コピの手順 ~コード編~

ではここから僕がいつもやっている耳コピの手順をご紹介します。といってもそこまで明確に順番があるわけではなく、無意識でやっている部分も多いですが、とりあえずこんな感じです。まずはコードをコピーする場合です。

ルート音を探る

もし一発でコードもポジションも押さえ方も分かればいいのですが、分からなかった場合は、まずルート音を探ります。ルート音とはそのコードの構成音の一番低い音で、その音がそのままコード名になっています。例えばCのルートはド、Dのルートはレという感じです。

大体はそのコードのアタマでベースが弾いている音なので、ベースの音を頼りにします。ギターコードの最低音よりオクターブ低いので注意しましょう。

ただ、ベースがルート音を弾いていない場合もありますし、分数コードというものも存在します。その辺は慣れていくと大体違和感で分かるようになってきますので、今意味が分からなくても大丈夫です。もし自分がコピーしているときに違和感を感じたら、その時に初めてこれらの用語を思い出してググってみましょう。

メジャー、マイナーの判断

次にそのコードがメジャーなのかマイナーなのかの判断をします。単純に明るいか暗いかという印象で、慣れるとここは一瞬で分かるようになります。

最高音を探る

ルート(最低音)が分かったら次は一番高い音を聴きます。最高音は聴き取りやすいので、まずそのコードの形を探る大きなヒントになります。

一番低い音と一番高い音が分かったら、あとはその間の音を特定していきます。

コードの押さえ方をなんとなく判断

ルートが分かって、そのコードがメジャーかマイナーかというのが分かり、最高音も特定できると、この辺でなんとなくそのコードの全体像も見えてきます。

例えばそのコードがCメジャーだとしたら、普通のスタンダードなローコードのCなのか、パワーコードなのか、6弦か5弦ルートのバレーコードのCなのか、または特殊な押さえ方のCなのか。

的を絞り始めます。この例の場合、5弦か6弦どちらのルートのCなのかはほぼ判別不可能ですしどちらを弾いてもいいのですが、その前後のコードチェンジの流れで不自然じゃない方を選ぶようにしています。

テンションを探る

セブンスだったり、ナインス、または11や13などのテンションが付いているかどうかも流れで判断します。

慣れるとセブンスは楽に分かるようになります。6や9、11や13は少し慣れが必要です。まあ明らかにオシャレな響きや不穏な響きをしていたら怪しみましょう。

コードのアタリをつける

この辺でもう正確なコード名が分かってきます。CM7だったとして、あとはポジションと押さえ方を探ります。

ここはもう慣れとしか言いようがないですが、バンドによって押さえ方にクセやお決まりのパターンがあったりするので、よく研究するといいです。僕がコードを探る場合はこんな感じの流れです。

特殊なコードの場合

ディミニッシュや♭5のようなクセのあるコードが出てくる曲もあります。これらも初心者の頃は苦戦させられます。

が、慣れてくるとこれらのコードに関しては決まった流れの中で出てきたりすることが分かってくるので、いつかは普通に聴き取れるようになります。

定番のフォームを覚えておく

コピーしたい音楽のジャンルによりますが、定番のよく使われるフォームを覚えておくとすぐに当てはめることができますし、応用がききます。

例えばCM7(Cメジャーセブンス)の場合、代表的な押さえ方としてex-2の図のような種類があると思います。6、7、8番のフォームは最もスタンダードですが、ロック系では6弦から1弦までの音を全部弾かない例もよくあります。

9、10番のようにコードの構成に必要な部分だけを押さえ、あとはミュートする省略コードもよく見かけます。ジャカジャカかき鳴らすだけでもカッコよく使い勝手がいいので、ロキノン系のギターロックバンドでリズムギターがよく使っている印象があります。もちろんその他のジャンルの音楽でも多用されています。

11、13番のようなフォームのCM7もロック系ではよくありますね。パワーコードに7度の音を足したような感じで、3度抜きなのでインパクトがありつつも緊張感のある響きを出せます。

また12、14番の超省略コード?もインディーロック系の音楽などでよく聴きます。ルートと7度の2音のみですが、使いどころによってはとてもかっこよく聴こえます。

これらのCM7のフォームは一例でしかなく、4弦以上をルートに使う押さえ方もありますし、その他工夫すれば様々なCM7があります。ですが、これらの基本を覚えておくと他の特殊な例との聞き分けもしやすくなります。

ギターソロやフレーズの場合

次はソロやフレーズのコピー方法です。これらに関してはスケールを少し勉強しておくとコピーがとても楽になります。何度も聴いて弾いてみながら照らし合わせていくしかないですが、その際のコツなどを少しご紹介します。

ハンマリングかスライドか

ピッキングせずに音を出すというテクニックでは同じ両者ですが、似ているようで結構ニュアンスが違います。

自分の癖で本当はハンマリング、プリングの部分もスライドで弾いちゃったりしてることがあるので、この部分はよく聴いて判断するようにしています。

左右の音を分離する

ステレオ音源でギターのパンがそれぞれ左右に振ってあって、右から聴こえるギターのフレーズをコピーしたいという場合は、ステレオを分離してLとRに分けると聴き取りやすくなります。

PCがあればフリーソフトでできるので、そのままコピーするのが難しい場合はやってみましょう。おすすめのソフトは「Audacity」です。曲を読み込んで「ステレオトラックを分離」を押せばすぐに左右に分かれた二つのモノラルトラックが出来上がります。この左右を分けてそれぞれ聴くという方法は、先ほどのコードをコピーする際にも有効な手段です。

再生速度を遅くしてみる

速いソロやフレーズをコピーする場合に役立つのが、再生速度を遅くする機能です。大抵の場合速度を遅くすると音程も同時に低くなってしまいますが、音程を保ったまま速度を遅くできるソフトもいくつかあります。

これもPCのフリーソフトで可能です。また有料ですがCubaseなどの音楽用ソフトウェアがあれば、これらの作業が簡単に高品質でできるので、お金を出してもいいという場合はおすすめです。

ベースの耳コピについて

ベースはギターに比べ単音の場合が多いので、耳コピも簡単そうに思われるかも知れませんが、意外と難しいです。低音の聴き取りは慣れていないと微妙な半音の判断がしにくく、僕もいまだに1フレットの差で迷うことがあります。

上記のモニターヘッドホンなどを使うと多少は楽になりますが、やはり慣れが一番です。またスラップなどベース独自の奏法をコピーする場合は、当たり前ですがその奏法自体を理解しておく必要があります。

また、僕がよくやってしまうことですが1番と2番が同じフレーズだと思って弾いていると、実はよく聴くと微妙に違うことをしていたりします。ちゃんと聴くことが必要です。

同じコード進行で同じリズムが何度も出てきても、ベースだけが毎回全然違うフレーズを弾いているバンドなどは耳コピ殺しです。有名なところではL’Arc~en~Cielのベースとかがそんな感じです。何度かコピーした経験がありますがめちゃくちゃ大変です。まあラルクはほぼ全曲スコアが出てるので耳コピをする人はあまりいないかも知れませんね。

まとめ

ということで簡単でしたが僕が思う耳コピのやり方をご紹介してみました。耳コピは本当に慣れの部分が大きいので、ひたすら挑戦し続けるのが一番上達の近道です。

どうしても行き詰るときは、CDが付いた教則本を買って、とりあえず耳を鍛えてみるのもアリです。僕の場合も、数年前には何を弾いているのか全く分からなかった曲に最近になって再挑戦してみたらめちゃくちゃ簡単に音が取れた、という経験があります。この記事の内容が少しでも耳コピのヒントや助けになれば幸いです。

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